本の紹介

かけがえのない宝物

本からの抜粋

診療所名の由来は「一期と苺」から

いちご歯科クリニック院長の廣田和好です。1967年4月生まれです。開院したのは私が32歳の誕生日でしたので、おかげさまで10年目です。患者さんと接しながら、診療所名の由来を問われることがよくあります。それは、「一期(生まれてから死ぬまで)と苺の意味合いをかけたもの」です。
私が歯科に興味を抱いたのは、小学校の頃だったと思います。歯医者や虫歯にではなく、歯並び・かみ合わせにですが・・・・。
私自身がもともと、やや受け口だったのです。大学生のころは切端咬合といって、出っ歯でも受け口でもない、上下の前歯がまっすぐかみ合う状態でした。歯医者になって、いちご歯科クリニックを開院した後も、8年近くはそのままだったのです。
最近、この前歯のかみ合わせに変化が起こったので、ここでお知らせします。写真に向かって右側が平成7年1月31日に、左側が平成19年4月18日に、それぞれ印象採得した(型を取った)私のスタディモデル(研究用模型)側面観です。違いがわかりますか?
右側が切端咬合、左側は正常咬合といわれるかみ合わせの模型です。歯科矯正の専門医や矯正治療の知識をお持ちである歯科医の先生は、「矯正治療の方法は?アンカー(固定源)は?」と質問なさるでしょう。そういうものは、ありません。
もちろん、プラケットシステムやPooシステム、アクアシステムという現在使用している矯正装置は自分の口の中に装着したことがあります。しかし、それぞれ4〜5年前で、1週間ほどずつ、治療目的というよりも違和感などを実感して、説明に生かそうとしただけでした。
プラケットシステム、必要に応じて外科矯正、スケレタルアンカレジシステム(SIS)を併用すれば、直せない不正咬合はないと豪語なさった某大学矯正科のもと助教授は、「歯は頬、唇と舌との力関係に調和がとれるところに並ぶのです。矯正治療では、歯を大体の所に並べているに過ぎないのです」ともおっしゃっていました。かみ合わせのやや甘い部分は挺出やかむ力によって、自然にしっくりなじんでかめるようになります。

「透明な字幕」のような透明な矯正治療が理想

洋画の字幕で有名な戸田奈津子さんが、どのような字幕が理想的か問われて、「透明な字幕」とお答えになっていました。なるほど、字幕はないと困るかもしれませんが、目障りと言われれば、否定できません。画像を損なわずに、意味合いはすっと伝わる理想的な字幕を、言葉で表現すると透明な字幕になりますね。
Pooシステムの顎態調和法研究会全国大会で、日本歯科大学 荻原和彦教授の御曹司・栄和先生が、装置は何もつけなくても歯並び・かみ合せが治る、透明な矯正治療が理想だとおっしゃって、満場の拍手喝采に包まれたことを思い出します。
荻原和彦先生の著書に、オーストラリアの原住民アボリジニーが紹介されています。下顎が発達しているアボリジニーは加齢に伴い歯が少しずつ移動して、全体では上下左右それぞれ小さな歯1本分ずつ移動してしまうのだそうです。歯が並ぶスペースが足りない時に、犬歯の奥に第一・第二と通常2本ずつある小臼歯を、上下左右それぞれ1本ずつ抜歯して矯正治療(抜歯矯正)することがありますが、このような治療が行われている根拠として、アボリジニーの例が挙げられるそうです。
歯とは歯かむことによって、徐々に擦り減ります(交耗)。これは、かみ合せの部分だけではなく、歯と歯の間の部分(隣接面)にも起こる現象です。ケースに入っていたビール瓶の脇の部分に摩擦によってこすれた跡がつくことを想像するとわかりやすいでしょう。
アボリジニーはかみ合せの部分だけでなく、隣接面の交耗が著名で、さらにかむ力が働くことによって、歯が移動するのです。
拙著でチューリップの歯と紹介していますが、はえてきたばかりの前歯は、ちょうどチューリップの花を想像させるように、先がギザギザになっています。これは異常ではなく、交耗によって、次第に平らになります。大人になってもチューリップのギザギザが残っている場合は、その歯を見ただけで、歯並びに問題があることがわかります。逆に交耗が進み過ぎるとかみ合せの部分に凹みが出てきて、やや黄色い象牙質が露出してしまいます。

歯と歯がかみ合う時間は5〜10分くらい

ところで、歯と歯がかみ合う時間は24時間のうち、せいぜい5〜10分くらいしかないといわれています。唇を閉じてじっとしている時は、安静時空隙といって、上下の歯の間に2mmほどの隙間が開いていて、ずっとかんでいると、むしろ異常な状態とされています。かみ合せのストレスがかかり過ぎると、異常な交耗だけではなく、歯周病や顎関節症の原因になることもあります。
上下の歯がかみ合う時間を累積すると、24時間のうち5〜10分ということは、あまりにも短すぎるようにおもいますが、かみ合う時間が12時間以上ということはないでしょう。歯にかみ合せの力がかかる時間よりも、かからない時間の方が圧倒的に長いにもかかわらず、かむ力が歯を動かすことは疑いようのない事実です。
歯に弱い力がかかると歯は動きますが、強い力が長くかかれば動くというものではありません。なかなか動かない時は、歯にかける力をむしろ弱めると、動くことがあるのです。歯に力がかからない時間よりも、かかる時間の方が長くないと戻ってしまうから、結局、歯は動かないと、単純な理屈の上では考えられますが、本当にそうでしょうか。
筋力アップあるいは維持のためのトレーニングを、休みなく続けていたのでは体が参ってしまうでしょう。トレーニングをしている時間よりも、安静にして休んでいる時間の方が長いはずです。負荷をかけては休み、また負荷をかけては休み、無理をせず、コツコツ、むしろ何々しながらのほうがよいといわれています。
歯にかける力もずっとより、むしろ、断続的にかかっている方が良いのかもしれません。
さて、骨を強制的に伸ばす方法があります。もともとロシアで考案され、現在でも実施されています。
インプラント様の金属製の器具で固定した大腿骨など長官骨を人工的に骨折させて、あるいは骨の表面にあって硬い皮質骨に切れ込みを入れて、ネジを使って少しずつ伸ばす方法です。もちろん感染症には特に注意が必要です。
背筋がゾッとするような過激な方法と、思う方もいらっしゃるでしょう。このような方法は、歯科矯正の分野にも、応用されることがあります。
ただ技術的には可能ですが、口の中は細菌が多いので感染症対策がどうしても十分できないことが問題で、歯科矯正でおすすめしにくい方法です。

歯を通じて「調和・共生・互恵」を世に問うために

地球規模での環境問題を論じる時に、調和、共生といった言葉が登場します。「バランスをとる」と言葉でいうことは簡単ですが、実践するとなると容易ではないかもしれません。
しかし、これらの概念は、歯科の世界でも大切でこれからますますその重要度を増すことは明らかです。治療という介入によって、治療する側も受ける側も、よかったと思える互恵的関係も大切です。
このような調和・共生・互恵を、歯科を通じて世に問うためにこの本を著したつもりです。
40年余り生きていて感じたこと、歯科医として10年以上の臨床経験から学んだことを紡ぎました。内容は、いちご歯科クリニックのホームページにある院長の「ひとり言」を増補改定したものです。この本が、読者の幸せな笑顔の源となることを、心からお祈り申し上げます。

2008年5月12日

いちご歯科クリニック院長
廣田 和好

かけがえのない宝物より抜粋しました。

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